家族や友人が失踪して行方がわからなくなってしまったら、警察に届け出ることを考えるかと思います。
失踪したときに出す書類として、失踪届と捜索願(行方不明者届)があります。この二つは字面だけ見ると似たような感じに思えるかもしれませんが、実際にはその二つは目的も出し方も全く違います。
今回は失踪届と捜索願がどのように違うのか、それぞれの目的や出し方はどうなのか、そして、提出するまでの手順について詳しく解説していきます。
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まずは失踪届と行方不明者届の違いを見ていきましょう。
失踪届とは行方不明になっている人を法的に死亡したとする書類のことです。
失踪届の出し方は、まず家庭裁判所に失踪宣告の許可をもらい、その許可が下りたら家庭裁判所に確定証明書を出してもらい、市役所に失踪届を出せば完了です。
失踪届を出す目的としては、行方不明になっている人を法的に死亡したという扱いにして、残された家族が法的な手続きができるようにするためです。
失踪届は法的に死亡したことにする書類のため、簡単に提出できるものではありません。条件として、基本的に失踪してから7年が経過していることが必要です。特例として、船が沈没した、津波に遭ったなどの危難にあった場合は1年経過すれば提出することが可能になります。
行方不明者届とは以前、捜索願と呼ばれていた書類のことです。行方不明者届は家族や友人の行方が分からなくなった場合に警察に捜索してもらうために提出します。
行方不明者届の届け出先は警察署です。どこの警察署でもいいわけではなく
・行方不明者が行方不明になった場所を管轄する警察署
・行方不明者が住んでいる場所を管轄する警察署
・届け出る人の住んでいる場所を管轄する警察署
のどれかに提出するようにしてください。
行方不明になってしまった人を探したい場合に提出するものなので、比較的容易に出すことができます。
ただ、行方不明者届は警察に捜索してもらうことを目的として提出しますが、残念なことに事件性がないと判断されてしまうと警察は積極的に探してはくれません。
警察が捜索してくれないとわかったら、人探し調査のプロである探偵に調査を依頼するのがベストです。
参考記事:家族が家出!警察に行方不明者届を出す場合に必要な知識と警察の対応
参考記事:探偵の人探し調査はどんな方法?プロの方法と自力でできる人探しの方法
失踪届を出すと行方不明になっている人が法的に死亡したとみなされます。では、失踪届はどのような場合に提出するのがいいのでしょう。
役所に失踪届を提出すると、行方不明者が所有していた財産を相続することができます。
行方不明者が生命保険に加入している場合は、失踪届を出したら「被保険者が死亡した」と見なされるため、その保険金を受け取ることができます。
ただし、保険金を受け取るためには、失踪宣告が認められるまで保険料を支払い続ける必要があります。もし途中で保険を解約してしまったり保険料を支払わなかったりすると保険金を受け取れませんので注意してくださいね。
行方不明者になってからの期間が長いと新しいパートナーを見つけることもありますよね。そうなると、再婚を考えると思いますが、行方不明になっていると離婚届を書いてもらうことすらできません。
失踪届を出すことができれば、法的に死亡したと見なされるため、婚姻関係を解消することができます。
失踪届を出した経験がある人はなかなかいませんよね。失踪届を出すためには何が必要なのか、誰なら出せるのか、基本的な知識を確認していきましょう。
失踪届は、失踪した人の家族や友人、そして利害関係のある他人も出すことができます。
ただし、失踪届を出すために必要な失踪宣告の申し立てをした本人が失踪届の届出書に署名と押印をする必要があることは頭に入れておきましょう。
失踪届を出す場所は、失踪した人の本籍地もしくは住所地を管轄している市区町村役場です。
失踪届を出す際に必要な書類は
・記入を済ませた失踪届
・家庭裁判所の審判書謄本
・確定証明書
・印鑑
です。
家庭裁判所の審判書謄本と確定証明書は、失踪宣告を申し立ててそれが受理されてから発行してもらえます。
失踪届には、
・失踪者の生年月日
・失踪者の最後の住所と世帯主
・失踪者の本籍地
・確定証明書に記載してある審判確定日
・失踪者と届出人との関係性
・届出人の住民票に記載してある住所
・届出人の本籍地
・届出人本人の署名捺印
・連絡先
を記入し、提出してください。
参考資料:失踪届(春日部市)
行方不明者届と違い、失踪届は提出して受理されるまでにかなりの手順を踏まなければなりません。
この章では、失踪届を提出するまでの手順を解説していきます。
失踪届を提出するには、失踪してから何年経ったのか証明する必要があります。そのため、警察に行方不明者届を出して、行方不明になってから7年経ったことを証明できるようにしておきましょう。
行方不明になってから7年が経過もしくは、船の沈没や震災などから1年が経過しても見つからない場合は失踪届を提出することが可能になります。
行方不明者をそのまま捜索し続ける場合は別ですが、相続手続きや離婚手続きをしたいとなった場合は失踪届を提出する準備をしましょう。
行方不明になってから7年経過したら、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをすることができるようになります。震災や船の事故の場合は1年経過後から失踪宣告の申し立てが可能になります。
失踪宣告の申し立てをすると、家庭裁判所の調査員が本当に死亡していると判断していいのかどうか、調査を実施します。調査員が行方不明者は死亡していると判断したら、失踪宣告が受理されたことになります。
失踪宣告が受理されたら確定証明書を家庭裁判所から出してもらえるので申請してください。確定証明書は失踪届を提出する際に必要になる書類です。
失踪宣告が受理されたら10日以内に役所に失踪届を提出しましょう。その際、確定証明書が必要になります。
もし10日以内に失踪届を提出できないと無効になってしまいますので注意が必要です。
失踪届を提出するためには失踪宣告を申し立てる必要があります。失踪宣告を申し立てる上で知っておくべき知識をこちらにまとめておきます。
失踪宣告を申し立てることができるのは、
・配偶者
・友人
・相続人
・法律上利害関係にある人
などです。
法律上利害関係にあたる人物であれば他人であっても申し立てをすることが可能です。
失踪宣告の申し立てにおいて必要な書類は
・失踪宣告をするための申立書
・行方不明者の戸籍謄本
・行方不明者の戸籍附票
・行方不明者届など失踪していることを証明する書類
・行方不明者と申立人との利害関係を証明する書類(親族であれば戸籍謄本など)
です。
審理のために必要となった場合は、追加書類の提出が求められる場合もあります。
失踪宣告をするために必要な費用は
・収入印紙800円
・連絡用切手の代金(裁判所によって変動あり)
・官報公告料4,816円
・確定証明書の収入印紙代150円
の合計約6000円です。
もし、失踪宣告をして失踪届を提出したあとに行方不明者が発見されたらどうすればいいのでしょうか。
その場合は、家庭裁判所に申し立てをすることで失踪宣告の取り消しができます。ただし、失踪届は簡単に取り消すことができるわけではないので、発見される可能性があるのであれば、気軽に失踪届を提出するのは控えたほうがいいでしょう。
失踪届を提出することを決める前に、探偵に人探し調査をしてもらい、発見してもらえる可能性が残されていないかどうか相談してみるのがお勧めです。腕のいい探偵であれば、少ない手掛かりからでも行方不明者を発見できるかもしれません。
また、失踪宣告が取り消されると、婚姻関係は失踪宣告前の状態に戻ります。ただし、保険金に関しては死亡保険金を受け取っていたとしても原則返金する必要はありません。
今回は、失踪届や行方不明者届の出し方や目的について解説してきました。
両者は名前から似ているように感じますが、全くの別物ですのでしっかりと区別して理解しておくといいでしょう。
なお、行方不明者届を警察に出せば捜索してもらえると思う方が多いのですが、事件性がないと判断された場合、積極的な捜索はしてもらえません。行方不明者を無事に見つけ出したいのであれば、早急に探偵に人探し調査を依頼することを強くお勧めします。
手遅れになってからでは遅いので、少しでも見つかる可能性が残されているのであれば、人探し調査に力を入れている探偵に相談してみるといいでしょう。